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【浄土真宗本願寺派佛心寺】池谷 正明

浄土真宗本願寺派佛心寺 池谷 正明 いけたに まさあき

寺院の価値を再構築。
自分にしかできないこと。

兵庫県神戸市・浄土真宗本願寺派佛心寺の次男として生まれたのが今回話を聞いた池谷正明(いけたに まさあき)だ。

自身も僧籍を持つものの大学卒業後、福岡のテレビ局に入社し14年勤務したのち、大手広告代理店の海外拠点に転職し企業ブランディングを担当するなど、マスコミ畑の人間であった。

しかし、海外勤務中のとある出来事をきっかけにお寺が置かれている厳しい状況を実感し、帰国後、寺院の強みを発信し地域ごとのニーズに合った集客を目指す広報代行会社「株式会社 唯」を立ち上げた。

「誰でもいいからお寺に来てください、という上から目線の活動は、今の時代にそぐわない」と話す池谷。異色の経歴を持つ彼はいったいどんな人物なのだろうか。

寺院を好きにはなれなかった

池谷にとってお寺は決して好きな場所とは言えなかった。次男として生まれただけで住職として継ぐこともできない、兄をサポートすることを期待される、そうしたしきたりや価値観に「自分の存在価値はなんだろう」と苦しんでいた。

また、お寺を訪れる人の中には一部ではあるが、お布施が高いなど文句を直接言いに来る人もいたという。そうした人に対しても住職である父はただ念仏を唱えて返すのみで、母が時折謝ることもあった。

「念仏の価値も、訪れる人に寄り添うことの意味もわかりませんでした」と寺院の存在や僧侶という仕事自体に疑問を抱いた。

「いつか自分の力で社会に出たい」と将来を思い悩んでいたとき、阪神淡路大震災が起きた。自宅が全壊し、母方の実家がある福岡に移住したことが転機になった。大学受験を控え、仏教系の大学へ進学することが当たり前と思っていた中、仏教系ではない西南学院大学に進学。お寺とは距離を置くことになり、大学卒業後には福岡のテレビ局へ就職した。

14年営業として勤務したのち「人の抱える課題を解決したい」と広告代理店の海外拠点に転職。ベトナムに渡り、企業の商品ブランディングに従事するなど、幼い時には考えられなかったマスコミの世界を渡り歩いてきた。

海外勤務を経てたどり着いた自らの使命

池谷はベトナムでオムツの広告制作に携わっていた。人に商品を買ってもらうために何を伝えるべきか。コンセプトを作り、受け取り手の気持ちを想像した。

当時のオムツは競合商品と性能面で大差はなく、差別化するには人の心に響く情緒的価値が大切だと池谷は考えた。オムツを買う親の苦労に寄り添い、この商品の会社なら応援しても良いと思ってもらうための導線を設計した。

「商品を作る人、買う人、使う人、関わるすべての人の立場に立ち理解すること、その大切さに気づいた」と池谷は語る。

ある日、同じくアジアで働いていた日本人の先輩とのある会話をきっかけに池谷は自らの進む道を決めたという。「海外で働いていた時、母の命日に墓参りができず、父から小さな御本尊(折り畳み式仏壇)を預かり、自分で法事をしていたんです」。

池谷が僧籍を持つことを知っていた先輩にこの話をすると、ご両親も高齢になり万が一の時にお葬式の頼み方もわからないと相談されたそうだ。「その先輩は実家によく帰っていたにも関わらず、菩提寺の住職さえ知らなかった」。セレモニーホールが葬儀をする場所の中心になり、納骨堂が選ばれるようになった。今は法事もネットで僧侶を頼める時代だとはわかっていた。しかし、檀家制度が崩壊し、自らと近い世代の人ですら、僧侶と話す機会が減少していることを痛感した。

「寺院と触れる機会が減れば、僧侶から本来の寺院の価値を伝えることも難しい。さらなる悪循環で寺院が消滅してしまうのでは」と強い危機感を抱いたという。“寺院の価値を再構築する”。お寺に生まれ育ち、その実情を肌身で感じてきた。

マスコミの仕事を通じ、人に想いを伝える困難と大切さ、その手段について考えてきた。そんな池谷だからこそ「自分がやるしかない」と自らの使命を悟った。

人と人をつなぐことで寺院を変える

池谷は帰国後、『株式会社 唯』を立ち上げ、お寺の広報サポートを始めた。都内のお寺で、通夜・葬儀の際に帯同する役僧として従事しつつ、最初は広報誌やHPの作成を進めていた。

活動の中で池谷はあることに気づく。「一般の方にとってお寺は墓参りのために来る場所で、自発的に話しかけたり、相談する人はいなかったんです」。コミュニケーションの不足が寺院と人のつながりが薄くなった原因だと感じていた池谷は、まず門の前に立って訪れた人に話しかけてみた。そうすると徐々に会話をしてくれる人が増えたという。

「人の中から寺院の価値がなくなったわけではなく、お寺側から顔を見せることで人々も求めてくれるようになる」。住職を含めたお寺の情報が事前にわかるだけで人々は相談しやすくなったと感じたそうだ。そして明るい雰囲気の開けたお寺には自然と人が集まっていた。

この経験を活かそうと、住職の人柄を紹介する記事作成を事業のひとつとして進めている。人々がお墓を探す時にお寺の特長が見えるように、まずは住職の顔を見せようと考えた。宗門のトップがインターネットなどで顔を出すようになり、お寺の業界も同じ方向に向かっている。その中で、お寺が自ら進んで、人から選ばれる確率を上げていく必要があると、池谷は感じている。

「住職の人柄がわかれば話を聞いてくれる。そうすれば僧侶がご先祖さまを守っているお寺の価値を直接伝えることもできる」

僧侶は相手に寄り添った視点で情報発信をする。来寺者は安心して納骨などの相談ができるようになる。2つをつなぎ合わせることで、寺院の再構築を進めている。

時代に合わせて寺院の価値を届けたい

株式会社唯ではもう一つの事業として檀家さんにお墓や納骨の相談をした際の実際のエピソードをユーザーレビューとしてまとめている。お寺を利用者の目線で語るストーリーが人々の共感を呼び、同じように悩みを相談したい人へと響いているという。

「お寺という施設自体が持つ願いの場、先祖を敬う場としての機能価値はしっかり残しつつ、もっと気軽に人が集まって話し合える場所に変えていければ」と池谷は目標を語る。

池谷の父は、住職として保守的だったそうだ。それでも池谷の始めた事業に対して、今後必要になると理解を示してくれたという。ほどなくして父は病床に伏せてしまうが、その時池谷は往相回向・環相回向の話をした。生きている人が極楽浄土を目指す往相回向、人が浄土に行ってから浄土とは何かを生きている人に伝える還相回向だ。

「ひとりの僧侶として父の闘病の痛みを和らげることができた。そのことが私も、父も嬉しかった」。『代わる者なし。我ひとりこれにあたる』父の辞世の句を胸に、池谷だからこそできる寺院の変革を進めていく。

株式会社唯

神奈川県横浜市港北区新横浜3-17-12

JR横浜線/東海道新幹線・新横浜駅下車 徒歩5分

浄土真宗本願寺派佛心寺

兵庫県神戸市須磨区前池町1−1–7

山陽電鉄板宿駅 徒歩4分

ご案内

住職の人柄記事パンフレットダウンロード

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住職の人柄記事ご紹介ページ

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株式会社唯ホームページ

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