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元日本テレビ深夜番組のUFO特番放送作家であり、住職をする傍ら、石川県羽咋市の職員として宇宙博物館「コスモアイル羽咋」を創立。地元米をブレンド化し、ローマ法王に献上するなど町おこしに携わった僧侶がいる。

「目に見えない心を健康にすると、身体も健康になります。健康のための食文化を築いてきたのも僧侶なんですよ。自然栽培で世界に喜んでもらうのは、日本人の役目ではないかと思うんです。農業で、まずは日本を元気にしたいと思っています。」

そう語るのが、今回紹介する、高野誠鮮(たかの じょうせん)だ。

彼は、農薬を一切使わない「自然栽培野菜」の開発、現在は妙法寺住職と兼務で大学客員教授として活動している。

仏教で日本を変えたい。そのために農業でまず日本を元気にしたい。そして世界を平和にしたい。

そう語る彼は、どのような活動をし、そして、どのような人間性を持つ僧侶なのだろうか?

仏教で日本を変えたい、日本を元気にしたい!

「体と健康の大切さを、仏教を通して伝えたい」

彼は日本を変えたいと願い、世界を幸せにしたいという志を持つ僧侶だ。

彼は、地域社会や人間関係の課題に対し、全ての答えは人間の身体の中にあると言う。

「私たちの身体は、怪我をすれば身体全体が支えようとします。細胞は、最後他の細胞の役に立ってから死滅します。これは自利利他の精神と同じなのではないでしょうか」

自利利他・・・つまり、他人の幸せのために尽力することが慈悲の心だという。

体の細胞が他を利するために生きていると気づいた時、これは仏教と同じだと高野は感じた。

自分を知るための方法として開発された「内観法」。それで、自分は生かされていることに気づいた高野は、親にしてもらったことを思い出し、こんなダメな人間でも生かされていることに気づき感動したという。

しかし、がん細胞だけは違う。がん細胞はもともと正常細胞で、自分だけが生き残ろうとする。私たちの生き方はがん細胞になっていないだろうか。

「自分がどんなダメ人間でも、生かされていることを知れば、人のためにできることはあります。それを食の大切さを通じて伝えたいんです。」

そう語る高野は、すべてのものには仏性があると、自然栽培を通じて伝えている。

「この世には、敵も害虫もいないんです。すべてのものには仏性があるという仏教の思想を自然栽培を通じて伝えていきたいと思っています。

国策に自然栽培を取り入れ、世界に喜んでもらう。それは日本人の役目だと思っています。農業で日本を元気にし、まずは日本を変えたいと思っています。」

食の大切さに取り組む理由と気づき

高野は「奇跡のリンゴ」のモデルとなった農家・木村秋則さんと出会ってから、「この世に意味のないものはない」と感じたという。

木村さんは、11年間に渡ってりんご畑にいる昆虫を観察し続けた。結果、人間が食べてはいけないところにだけ虫がついたという。つまり、害虫など存在しないのだ。

木村さんのリンゴは、食べずに置いておいたら、腐るのではなく枯れた。今の野菜は腐る。これは異物が入っている証拠なのだという。

食も余計なものが混じってしまうと健康を損なうことがある。

宗教(religion)という言葉には(re-orgin『元に戻る』)という意味がある。本来の在り方を追求すると、食の本来の姿は「枯れる」だ。

畑の、すべての生物の存在を認め、その役割を生かす農法は、木村さんが実践する自然栽培だ。

人間社会も同じで、すべての人の存在を認め、平等に生きられる社会を目指すために宗教が存在する。

「仏教の思想と自然栽培は重なり合うものがあります」

ありのままのものに余計なものなんてないことを、法華経でも伝えている。

これは、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」で伝えた菩薩行と同じだ。「雨ニモマケズ」は最後、このような終わり方をしている

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ホメラレモセズ

クニモサレズ

サウイフモノニ

ワタシハナリタイ

南無無辺行菩薩

南無上行菩薩

南無多宝如来

南無妙法蓮華経

南無釈迦牟尼仏

南無浄行菩薩

南無安立行菩薩

引用:宮沢賢治『雨ニモマケズ』

 

法華経が書かれているのだ。

根っこの部分は、こんな菩薩になりたいと言うことを反映した詩だと言うことに高野は気付いたと言う。

「目に見えない心を健康にすると、同時に身体も健康にします。健康のための食文化を築いてきたのも僧侶なんです」

『腐る』のではなく『枯れる』食べ物こそ、自然に沿った食べ物であり、人間の健康に必要なのではないかと考えた高野は、食べ物を本来の姿に戻す取り組みを行うことを決意したという。

僧侶になったばかりで生計が立たないことから、公務員の臨時職員となり、地元のJAとともに、農薬や化学肥料を使わず自然の調和の中で野菜を育てる『自然栽培塾』に取り組んだ。

お坊さんになると決めた夢の話

高野は妙法寺の次男として生まれたが、東京のテレビ局で働いていたので寺を継ぐ気は全くなかったという。しかしある時、檀家の総代から「継がないなら、他人に寺院を継承する。お前の故郷は無くなるがいいか?」と言われた。

高野は小さなころ教会に通っていたり、母親からも寺を継がなくていいという教育まで受けていた。

継ぐ気は無かった高野だが「故郷が無くなる」という言葉がどうも引っかかった。

ちょうど、海外取材で米国・ニューメキシコに行った時、現地の占い師から「家を継ぐだろう」と予言され、帰国後に気になって新宿の占い師に聞いたら、全く同じ回答だったという。

そこで、高野は学生時代に見た夢のことを思い出した。

実家で寝ていると畳が浮き出し、畳の下から金の冠をつけた人が出てきて「この寺を継ぎなさい」と言われた。

宿命を感じ僧侶になることを決意した高野は、立正大学で仏教を学んだ。そこでお経を読んだ時『地湧菩薩(じゆぼさつ)』という言葉に全身鳥肌が立ったという。

「金の冠をつけた地湧菩薩、つまり仏さまは思弁的に作ったものではなく実際に存在するのだ」

そこから仏教にのめり込み、法華経を学んだ高野にとって、日蓮聖人は生きている、目に見えない師匠だという。

生きている人を対象に 〜人に寄るな法に寄れ

「寺は、死んだ人だけではなく生きている人も対象にしていると思っています。仏教で見えない心を健康にすると同時に、体を健康にすることに取り組むことも大切なのではないでしょうか」

そう語る高野は僧侶になってから、お寺には檀家以外の人にもたくさん来てもらおうと思い、超能力者や医者、落語家など様々な人をお寺に招いてきた。

「坊さんは坊さんらしくやれ。地域活動にちょっかいを出すな」と言われたこともあると言う。しかし結局は誰のためにやっていることなのか、どこに原点があるのかを仏教は教えてくれた。

公務員であっても僧侶であっても、根本は変わらない。そもそも人とは何か、高野は自分に根源のような問いかけをし続けている。

愛と知恵を足すと哲学になる。しかし今は「愛と知恵」が足りない時代。そこで仏教が役に立つのだ。

日本は神道に異教が入ったら他国であれば争うところを融合させた。世界には例のないことだ。この日本人の解釈は天才だと高野は感じたと言う。

お釈迦様が言った「人に寄るな。法に寄れ」とは信じることだ。人は、他人や組織の考えにほだされ余計なことをしてしまう。いつしか組織のトップに立つことが目的になって、組織のためにならない行動をしてしまう。

「二元論で語るのではなく、根本でつながっていることを思い出すだけで、世界はつながることができます。

この世には敵も害虫もいません。すべてのものには仏性があると言う仏教の思想を、自然栽培を通じて伝えていきたいです。

世界にある数々の課題も、この思想で解決へ導けると、私は確信しています。」

―インタビュアーの目線―

高野さんが「この世に意味のないものはない」とおっしゃった言葉にハッとしました。

他人と比べて自分を責めたり、些細なことで人にイライラしたり、何かとしんどい都会生活で消耗していた自分にとって、自分だけが生き残ろうとするガン細胞のような生き方をしていたのではと気づかされました。

高野さんが住職を務める妙法寺の境内や墓地はとてもシンプルな景観で、民家のなかにしっかりと溶け込んでいます。

人は仏様でつながってることを感じさせてくれる、居心地がいいお寺でした。

「人に寄るな。法に寄れ」の意味を教えていただいた取材でした。

プロフィール

高野 誠鮮(たかの じょうせん)  63才

石川県羽咋市/日蓮宗本證山妙法寺 住職

日蓮宗妙成寺 相談役

総務省 大臣委嘱地域力創造アドバイザー

立正大学客員教授

1984年 テレビの放送作家を経て、羽咋市役所の臨時職員

1996年 町おこし策として宇宙博物館「コスモアイル羽咋」を開館

2005年 1.5次産業振興室創設(農山漁村活性化計画に着手)

    ローマ法王に神子原米を献上

2009年「全国地産地消推進協議会長賞」特別賞受賞(神子の里)

2010年 第一期「木村秋則自然塾」を開催

2012年 自然栽培米がパリの三ツ星店へ進出

2014年 立正大学客員教授

2015年    著書がドラマ化(TBS『ナポレオンの村』)

2016年    羽咋市を定年退職

    新潟経営大学特別客員教授に就任

    氷見市地方創生アドバイサー

    東京大学朝日講座講師

2017年 京都大学公共経営論講師

 

著書:

2012年『ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?』

2016年『頭を下げない仕事術』

   『日本農業再生論「自然栽培」革命で日本は世界一になる! 』(木村秋則 共著)

2017年『UFOとローマ法王、そして自然栽培:空飛ぶ円盤で日本を変えた男』

 

妙法寺  https://www.facebook.com/pg/ootamachimyouhouji/