地域との結びつき、家族関係の希薄化から考える〜檀家制度『脱・依存』とは
「私は檀家制度(檀家)に対して寺院が『脱・依存』することが大切なのではないかと思っているんです。
寺院収入の内訳が100パーセント檀家に依存するのは不健全だと言えますよね。」
彼は寺院が檀家を大切にするのであれば、檀家に依存しないことが大切だと語る。
現代社会は高齢化にあり、80歳以上で死亡する割合は65パーセントにものぼる。
80歳以上といえば、仕事は引退しているし、友人関係は疎遠になっている人もいるだろう。
家族関係も現代は希薄化している。葬儀や法事は大切だが、大人数でする行事にはならない。
もちろん檀家は大切だが、檀家以外の人がお寺にどうやって来ていただくか、好きになってもらうかが大切だと語る松山に、地域との結びつきについて問い掛けてみた。
ー地域が昔と変わったところとは?ー
「地域との結びつきが弱くなっていると感じています。なんというか・・・京都なのに、京都っぽくしようとしている施設が目立つというか。
地域文化にはひとつずつ意味があるんです。
そして、そんな地域の風習や習慣は祖父母から本来学ぶものでした。親子ではコミュニケーションは取りにくいものなのですが、祖父母から聞いた文化や風習は浸透していきます。
京都は3代続いて京都人になるといいますからね。地域から出てしまうと、その文化が断絶されて浸透しなくなってしまうんです。」
例えば、松山は平林寺(埼玉)の修行道場での修行後、歩いて帰ったという。京都にたどり着いた時、打ち水を見て京都を感じたという。
それは、打ち水は軒先に点々と水を撒くことで「ようこそ、どうぞお入りください」と、無言で示すものだった。
今はホースでバシャっと散水するだけだ。それを祖母から聞いたのを思い出したという。
つまり今は、「京都だから打ち水をする」というような、表面しか真似ていない感じがするのだと、松山は語ってくれた。
文化が断絶され浸透しづらくなっている現代。地域との結びつきも弱くなっているが、妙心寺では地域の家族に向けてこんな取り組みをしている。
「10年ほど前から妙心寺では、灯篭の絵付けや一般の子供向けに2泊3日のお寺合宿を行っています。坐禅をして、本堂の雑巾がけをして、そうめんを振る舞うというものです。
他のお寺でも、例えば坐禅と食事会はどの地域でもできる取り組みですし、今では地域企業が寺院で企業研修することも増えていますね。」
研修を受けた人は、「ご飯がこんなに美味しいとは気づかなかった」と口を揃えて言う。
それは普段から食事に集中せず食べているからなのだ。静かな場所で食事だけをする環境は、味噌の味わいやご飯の香りまでも味わえる。
現代ではそのような環境に身を置く時間が取れないので、研修は貴重な体験だ。