今を生きる人と体系的に関わる
終活という言葉が浸透し、世間の人の中にも死ぬ前に死について考える人は増えている。
その中で、遠山自身も臨床宗教師の活動などを通し、生前から関わることを強く意識している。
「例えば、菩提寺はないけど生前戒名がほしいとご相談に来られる方もいらっしゃいます」
その人は病にかかり、自分の余命が幾ばくかわからない中で安心したいと戒名を求めていた。
しかし、ご縁のある寺院に相談するといきなりお金の話を始められ嫌悪感を抱いていたそうだ。
遠山はここでもヒアリングと対話を欠かさない。
「具体的な戒名の話はせず『なぜ戒名をつけたいか?』というところから2時間ほどお話させていただきました」
だからこそ、その人も安心して遠山に戒名をお願いできたそうだ。今でもご先祖様の月命日に赴き、お付き合いが続いている。お経をあげ、1・2時間ほど会話をするそうだ。
こうした生前からの僧侶としての活動は、地域包括ケアシステムから声をかけられることもあるという。地域包括ケアシステムは、高齢者の方が住み慣れた地域や自宅で日常生活が送れるよう、地域における支援サービスを一体的に提供できるケア体制の構築を目指すものである。
その中で、遠山は末期ガンやALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者と対話を重ね、看取りにも関わってきた。
「自分の死は受け入れられるが、遺す家族のことが心配だと言われる患者さんは多くいらっしゃいます」
だから、遠山は患者のみならず、ご家族のケアにも定期的に顔を出し、患者が亡くなられた後もグリーフケアという形で縁が続いていくという。
さらに、遠山に依頼をしてくる医療従事者に対しては、患者との対話の中での気づきをフィードバックしている。
「どんな人生を生きてきたのか、どんな気持ちなのか。対話の中で出てくる感情や望みをお伝えして治療に活かしていただいています」
生前からの人と僧侶との出会い方・変わり方、医療と僧侶のケアにおける関係性。
遠山のようにこうした体系の中で僧侶が活動することは、今や当然のように求められ、これまでのように感覚的に対応していた宗教活動では済まされないのである。