もっと自由に仏教を広げたい
橘の根底には「一般市民の目線からは仏教の教義はわかりにくい」という思いがある。
だからこそ、寺の敷居を低くして親しみやすいお寺を目指しているのだが、それに加え仏教の声を求めている人たちに対して自らが赴くことの必要性も感じていた。
そこで、臨床宗教師となり、病院などの施設で傾聴する活動を始めた。
臨床宗教師は病により終末期にある人や災害などで心に傷を負った人の悲しみや苦しみに寄り添いケアをする宗教者である。
「宗派によって、一般の人には理解できないことが正しいと言われる教えもありますが、それでは人に寄り添うことはできないだろうと。本当に困っている人には私の方から会いにいかなきゃと思ったんです」
震災から避難されて故郷とは離れた場所で生活する方、病院などで病を抱える方を中心に出会う機会があればどこへでも赴き、その声に耳を傾ける。
さらに、この傾聴活動の経験を活かし、エンディングノートを制作し、福祉施設などで無償配布を予定している。
「僧侶や臨床宗教師としての経験は終活として語ることができます。根本の問題を解決することはできませんが、人の声を聞き、語らうことはできますから」
また、近く永代供養墓を作り「墓友」を作ることを推進している。
「おばあちゃんたちが事あるごとに『なんまんだぶ』と手を合わせ祈ることで心を落ち着かせる姿を見て、この人たち同士でつながる必要性も感じたんです」
まだ43歳の橘は、これからも自由な発想で仏教の声を積極的に届けていくだろう。