食の大切さに取り組む理由と気づき
高野は「奇跡のリンゴ」のモデルとなった農家・木村秋則さんと出会ってから、「この世に意味のないものはない」と感じたという。
木村さんは、11年間に渡ってりんご畑にいる昆虫を観察し続けた。結果、人間が食べてはいけないところにだけ虫がついたという。つまり、害虫など存在しないのだ。
木村さんのリンゴは、食べずに置いておいたら、腐るのではなく枯れた。今の野菜は腐る。これは異物が入っている証拠なのだという。
食も余計なものが混じってしまうと健康を損なうことがある。
宗教(religion)という言葉には(re-orgin『元に戻る』)という意味がある。本来の在り方を追求すると、食の本来の姿は「枯れる」だ。
畑の、すべての生物の存在を認め、その役割を生かす農法は、木村さんが実践する自然栽培だ。
人間社会も同じで、すべての人の存在を認め、平等に生きられる社会を目指すために宗教が存在する。
「仏教の思想と自然栽培は重なり合うものがあります」
ありのままのものに余計なものなんてないことを、法華経でも伝えている。
これは、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」で伝えた菩薩行と同じだ。「雨ニモマケズ」は最後、このような終わり方をしている
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ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
南無無辺行菩薩
南無上行菩薩
南無多宝如来
南無妙法蓮華経
南無釈迦牟尼仏
南無浄行菩薩
南無安立行菩薩
引用:宮沢賢治『雨ニモマケズ』
法華経が書かれているのだ。
根っこの部分は、こんな菩薩になりたいと言うことを反映した詩だと言うことに高野は気付いたと言う。
「目に見えない心を健康にすると、同時に身体も健康にします。健康のための食文化を築いてきたのも僧侶なんです」
『腐る』のではなく『枯れる』食べ物こそ、自然に沿った食べ物であり、人間の健康に必要なのではないかと考えた高野は、食べ物を本来の姿に戻す取り組みを行うことを決意したという。
僧侶になったばかりで生計が立たないことから、公務員の臨時職員となり、地元のJAとともに、農薬や化学肥料を使わず自然の調和の中で野菜を育てる『自然栽培塾』に取り組んだ。