自らの祖父母の供養を目指し仏道へ
福岡のごく一般的な家庭に育った足立は、社会人として実家の家業を手伝ったり、何度かの転職を経て自ら事業を経営するなど仏教からは縁遠い人生を歩んでいた。
しかし、ある日経営していた会社を閉じることを決意する。
「当時はお金を稼ぐことに執着する日々が続き、毎日が暗い気持ちでいっぱいだった」
と足立はその時の心のうちを語る。
ある日、足立は不可思議な体験をする。
「夜中に寝ていたらすでに亡くなっていた祖父母の姿を見たのです。」
夢か現かわからないが、確かに祖父母が微笑みかけてくれていた。
「今思えば、『まだまだこれからだよ』と諭されているような気がしましたね。」
その後、活力を取り戻した足立は札幌の葬儀社で働き始める。
しかし、そこで見たのは人の思いに寄り添うとは程遠い、ビジネスライクな葬儀の現場だった。
「思いのない人たちに拝んでほしくなかった」と感じた足立の心によぎったのは、自らが僧侶になり、人生を助けてくれた祖父母を自らの手できちんと供養してあげたいという純粋な気持ちだった。
そんな時、足立は1人の僧侶と出会う。「葬儀社で働いていた時、いろんな宗派の葬儀を見てきましたが、その方が最も美しい所作でスムーズな葬儀をされていたのです。」
足立はその僧侶に「祖父母の供養を自ら行いたい」と仏門に入りたい旨を相談した。
「サラリーマンとの違いや、一般家庭で育った私が僧侶になることの難しさを丁寧に説いてくださったのちに、『本当に覚悟があるのなら、私のお寺で役僧として修行なさい』と。」
こうして足立は祖父母への思いを胸に48歳にして仏教の道を歩み始める。