若い僧侶よ、大きくはばたこう
倉島は、任期満了に伴い、2019年5月15日を以て全国曹洞宗青年会の会長の座を退いた。
若い世代にバトンを渡すいま、これからの彼らに求めることについて尋ねると、倉島は少し厳しい表情で答えた。
「仏教界の発信力を強めるためには、若い人材の登用が求められています。
その一方で、若い僧侶たちは“宗派の壁がある”とか“目新しいことをすると潰される”と言い、行動に移さないケースを見聞きします。
しかし、それではだめ。仏教者は、大きくはばたいた方が面白いのです。もともと、失うものなどないのですから。」
彼が「禅僧の在り方を見つけた」と言うほど尊敬する澤木老師も、若い僧侶の活動を訴えていた。
そして、その弟子だった弟子丸老師は単身で渡仏し、法式が整理されていなかったフランスに坐禅の文化を根付かせた。
弟子丸老師が日本を飛び出さなければ、フランスのみならず、ヨーロッパに坐禅文化は根付かなかったかもしれないし、倉島が渡仏することも、『典座』が制作されることもなかったかもしれない。
自分を信じてはばたいた人がいたからこそ、変化が生まれ、さらには次世代に意志が受け継がれたのだ。
「やるべきことを黙々とやれば、結果は出ると思います」という倉島の説得力のある言葉が、多くの若い僧侶たちに伝わることを願ってやまない。