単身世帯、無縁仏の増加する現代。地域組織と協同し「お寺の終活プロジェクト」推進へ
現在大阪市は急激に単身世帯の数が増えており、無縁仏の数が全国最多だ。12人に一人は、遺骨の相続人が見当たらない、もしくは引き取りを拒否されるという事態である。
「もちろん、そういった単身者のためにお葬式をすることも必要です。しかしまずは、途絶えてしまった関係性を、生きているうちに回復していくことが大事なのではないでしょうか。」
実際、應典院に来ている人たちの中にも、40〜50代の未婚者は多いという。今アート活動に励んでいる若い世代も、無縁仏の予備軍となるかもしれないし、いずれは終活の拠点が必要となるだろう。
しかし、一般の多くの人々は終活について、誰に何を相談すればいいのか十分わかっていないのが現状である。
そこで秋田は、2018年夏、広く市民を対象に、終活の相談事業、異領域との協働、市民教育を推進する「お寺の終活プロジェクト」を設立。さらに2019年5月には、その拠点となる「ともいき堂」を境内に建立。なお、「ともいき堂」建設のための資金の一部は、クラウド・ファンディングによって調達されたものだ。
さらに現在は、持続可能な体制を作るために、さまざまな事業者と協働した取り組みも始めている。
目標は、社会事業者、医療看護事業者、終活事業者と提携し、 広域なネットワークでサポートする「地域包括ケア寺院」の創成。先行世代の責任として、自分たちが「寺業モデル」を作り、後世に伝えたいと語ってくれた。
「お寺がどう生き残るかというよりも、地域に根ざした「ローカル仏教」そのものの復権を目指すべきだと感じます。どのようにして、地域組織や住民と寺院が協働できるのか、時代に合った形のローカルモデルをデザインしていくか。そこに今、試行錯誤していますね。」
ローカル仏教の復権のためには、まず僧侶が地域活動に積極的に参加し、交流する必要がある。最初から協働といってもハードルは高い。手始めは子供のPTAで役員をやる、地元の青年団に参加する、そんなところからスタートしてもいい。
信徒だけでなく、垣根を超えて全く異なる世界にいる他者とつながることで、新しいものが生まれていくのだ。